ペンが好きになると、少しずつ見るところが変わってきます。
最初は書きやすさだったかもしれません。
インクの滑らかさ。
握りやすさ。
重さ。
ところが何本か使っているうちに、軸の素材が気になってくる。
金属なのか。
木なのか。
樹脂なのか。
さらに、その軸がどうやって作られているのかまで気になってくる。
削り出しなのか。
成形なのか。
最後はどう仕上げているのか。
そして、色や柄を眺めることそのものが楽しくなってくる。
文字を書くためだけなら、もっと安くて便利なボールペンはいくらでもあります。
それでも、なぜか欲しくなる一本がある。
筆記具には、「書く」という機能だけではない楽しみ方があるのだと思います。
MARIO DEL MAREの22PENも、そんな視点から見ると、少し変わったボールペンです。
ペンの「軸」を楽しむという世界
ペンの印象を大きく左右するものの一つが、軸の素材です。
同じボールペンでも、素材が変われば手にしたときの感覚も、見たときの印象も変わります。
金属軸の魅力
金属軸には、独特の硬質な感触があります。
アルミ、真鍮、ステンレスなど、使われる金属によって重量や質感も違います。
切削跡をあえて残したもの。
美しく磨き上げたもの。
表面処理によって色を付けたもの。
精密に加工された金属そのものを楽しめるのも、金属軸の面白さです。
木軸の魅力
木軸には、金属とはまったく違う魅力があります。
木目は一本一本違います。
同じ樹種でも、まったく同じ表情にはなりません。
使っているうちに色艶が変わっていくこともあります。
新品の状態だけではなく、使った時間まで表情に現れてくる。
そこに惹かれる人がいるのも分かります。
樹脂・アセテート軸の魅力
そして、もう一つ面白いのがアセテートです。
金属とも木とも違う。
色彩や柄そのものを楽しめる素材です。
単純な赤、青、黒という色だけではありません。
複数の色が重なったもの。
透明感を感じるもの。
複雑な模様を持つもの。
光の当たり方で印象が変わるもの。
ペンを「色で選ぶ」という楽しみを大きく広げてくれる素材です。
アセテートをペンの軸に使う面白さ
アセテートという名前を聞いて、筆記具より先に眼鏡を思い浮かべる人もいるかもしれません。
眼鏡のフレームなどにも使われ、豊かな色彩表現ができる素材として知られています。
22PENにも、このアセテートが使われています。
アセテートとはどんな素材なのか
アセテートの面白さは、単に「樹脂だから軽い」といったところだけではありません。
大きな魅力は、その表情です。
色や柄にさまざまなバリエーションがあり、素材そのものに存在感があります。
だから、形が同じでも使うアセテートが変わると、完成したプロダクトの印象が大きく変わります。
色と柄がつくる独特の表情
一般的な工業製品では、同じ色をできるだけ均一に仕上げることが求められます。
もちろん、それには大きな意味があります。
一方で、素材の柄や色の重なりを生かすプロダクトには、少し違った面白さがあります。
見る場所によって柄の出方が違う。
光が当たると、思っていたより深い色が見える。
角度を変えると印象が変わる。
色を塗ったのではなく、素材そのものが色を持っている。
ここがアセテートを使ったペンの面白いところです。
Mazzucchelli(マツケリ)のアセテート
22PENに使われているのは、Mazzucchelli(マツケリ)社製のアセテートです。
マツケリの魅力の一つが、豊富なカラーバリエーション。
同じアセテートという素材でも、色や柄によってまったく違った表情があります。
豊富なカラーバリエーション
ペンを選ぶとき、
黒にするか。
ブルーにするか。
ブラウンにするか。
そんな単純な色選びだけではありません。
アセテートの場合、柄そのものを見比べる楽しさがあります。
落ち着いたもの。
鮮やかなもの。
複数の色が混ざったもの。
少しクラシックに感じるもの。
同じ形の22PENでも、素材が変われば別のプロダクトのように感じることがあります。
ペンの色を選ぶというより、
「どの素材を選ぶか」
に近い感覚です。
同じ色が、いつまでも作られるとは限らない
ここもアセテートの面白いところです。
マツケリにはさまざまなカラーがありますが、すべてのカラーが永久に生産され続けるわけではありません。
時代とともに、新しい色が登場する。
その一方で、生産を終了する色もあります。
年代とともに生産終了するカラー
工業製品なら、気に入った色を後からもう一度買えることがあります。
ところが素材そのものが生産終了してしまえば、同じ素材をいつまでも使い続けることはできません。
昔作られていたけれど、今は作られていない。
そんなアセテートが存在します。
現在では作られていないアセテート
MARIO DEL MAREでは、そうした過去に生産され、現在では生産されていないアセテートを「ビンテージカラー」と呼んでいます。
ここで少し大切なのは、
最初から希少性を目的につくられた限定カラーとは違う
ということです。
限定100本。
期間限定。
そういった販売方法によって生まれた希少性ではありません。
素材そのものが、時代とともに作られなくなった。
だから同じ素材を使ったものを、いつでも作れるわけではない。
そこに少し違った面白さがあります。
22PENに使われるビンテージカラー
22PENにも、こうしたビンテージカラーのアセテートが使われることがあります。
ペンの形だけを見るなら、同じ22PENです。
でも、
「この色は今も作られているのだろうか」
「これはいつ頃の素材なのだろう」
と素材の背景まで見るようになると、一本のペンの見え方が変わってきます。
ペンを集める人が、軸の素材や色にこだわる理由の一つは、こんなところにもあるのかもしれません。
一枚のアセテートから22PENを削り出す
22PENのもう一つの特徴が、作り方です。
アセテートの色を表面に印刷しているわけではありません。
素材そのものから、ペンの形をつくっていきます。
成形ではなく切削加工
22PENは、切削加工によって削り出して作られています。
素材を用意し、そこから不要な部分を削って形をつくっていく。
最初からペンの形をしたものが出てくるわけではありません。
削る。
形を整える。
また削る。
そうして、少しずつ22PENの形になっていきます。
完成したペンだけを見ていると分かりにくいのですが、製造工程を見ると、
「この形を素材から削り出しているのか」
と、また違った見方ができます。
削ることでペンの形をつくる
削り出しには、もう一つ面白いところがあります。
素材の中にある色や柄と、完成した形との関係です。
どこを削るのか。
どの部分が表面に現れるのか。
アセテートという色彩豊かな素材を立体的な形へ加工することで、平らな素材の状態とはまた違った表情が現れます。
22PENの色を見比べるときには、単純なカラー名だけでなく、そんな素材の表情にも目を向けてみると面白いと思います。
最後は職人の手で、一つひとつ研磨する
切削加工が終われば完成。
というわけではありません。
22PENは、削り出した後に研磨工程があります。
そして、この仕上げは職人が一つひとつ行っています。
切削加工の後に行う研磨
切削によって形をつくった後、表面を研磨して仕上げていきます。
削る工程と、磨く工程。
機械加工だけで完成させるのではなく、最後に人の手が入ります。
アセテートの色や柄だけではなく、表面の質感まで含めて一本の22PENになります。
一本ずつ仕上げる22PEN
「職人が作っています」と言うと、少し大げさに聞こえることがあります。
特別な言葉を使う必要はないと思っています。
実際に、
削り出す。
研磨する。
仕上げる。
その工程を経て一本のペンになる。
ただ、それだけです。
でも、完成したものを見るときに、その作られ方を知っていると少し見方が変わります。
同じ22PENでも、素材を見ると少し違って見える
ペンは、文字を書くための道具です。
だから書き味は大切です。
握った感覚も大切です。
でも、それだけで選ばなくてもいい。
今日はこの色を持ちたい。
この柄が好き。
この素材の雰囲気がいい。
そういう選び方があってもいいと思います。
色を選ぶ楽しみ
アセテートのカラーバリエーションを見ていると、実用品を選んでいるというより、眼鏡のフレームを選ぶ感覚に近いところがあります。
自分が好きな色を探す。
鮮やかな色を選ぶ。
あえて落ち着いたものにする。
複数の色を持つ。
機能が同じでも、色が変わると持ったときの気分は変わります。
素材の背景まで知って一本を選ぶ
さらに、
マツケリのアセテート。
現在生産されているカラー。
すでに生産を終了したビンテージカラー。
切削加工。
職人による研磨。
そんな背景を知ってから一本を見ると、単なる「色違い」とは少し違って見えてきます。
何から、どうやって作られたのか。
そこまで含めてペンを楽しむ。
筆記具には、そんな楽しみ方もあります。
そして、この素材を厚さ6mmの2色ボールペンにする
ここまで素材の話をしてきましたが、22PENにはもう一つ特徴があります。
その形です。
22PENの厚さは6mm。
一般的な丸軸のボールペンとは違う、薄い形をしています。
ただし、この記事で伝えたいのは薄さそのものではありません。
素材の表情を生かしながら、この形へ削り出し、さらに2色ボールペンの機構まで収めていること。
アセテートという素材。
削り出しによる形。
職人による仕上げ。
そして薄いボディの中に収めた2色の機構。
それぞれが一つの小さな筆記具の中にまとまっています。
素材からペンを見ると、筆記具はもっと面白い
ペンを選ぶ基準は、人それぞれです。
書き味を最優先する人。
重さや重心にこだわる人。
インクが好きな人。
万年筆のニブにこだわる人。
木軸が好きな人。
金属加工が好きな人。
そして、色や素材に惹かれる人。
どれが正しいということではありません。
ペンは小さな道具ですが、見ようと思えばいろいろなところを見ることができます。
特に、何本もの筆記具を使ってきた人なら、
「何が書けるか」だけではなく、「何から、どうやって作られた一本なのか」
という選び方も面白いと思います。
22PENについて
MARIO DEL MAREの22PENは、Mazzucchelli社製アセテートを使い、切削加工によって削り出して作られる2色ボールペンです。
切削後は、職人が一つひとつ研磨して仕上げています。
マツケリならではの豊富なカラーバリエーションに加え、現在では生産されていないビンテージカラーのアセテートが使われることもあります。
書くための道具として。
そして、素材や作り方そのものを楽しむ一本として。
色だけではなく、
「この一本は、どんな素材から作られているのだろう」
というところまで見ていただければ、22PENの少し違った面白さが見えてくると思います。